【化学療法中の検査値で重要なのは好中球】

 

がんに対する化学療法では、免疫能をつかさどる白血球が減少し

感染を起こしやすい状態になります。白血球が少ない状態で感染

を起こすと致命率が高く危険なため、化学療法実施前に採血して

白血球数を確認するのが一般的です。

 

白血球はアズール顆粒を持つ顆粒球と持たない単核球、リンパ球

に分類されます。顆粒球はさらに好中球、好酸球、好塩基球に分類

されます。一般細菌に対する免疫能は主に好中球が担っており、

化学療法で減少するのも好中球です。

白血球数は単核球、リンパ球も含む白血球全体の数なので、白血球

数をみても患者さんの免疫能が低下しているか、細菌感染リスクが高

いかはわかりません。好中球数を算出する必要があるのです。

 

好中球数(/mm3)=白血球数(/mm3)×好中球分画(%)/100

 

好中球はその形態から桿状核球(Band)と分節核球(Segmental)に

大別されます。好中球で分画の表示がない場合は、この2つを合計

した値を好中球分画として算出します。

 

好中球数が2000/mm3以上あれば概ね正常な免疫能が保たれてい

ると考えて大丈夫です。

 

【好中球の減り具合と対応】

 

化学療法に伴う有害事象の重症度を分類するCommon Terminology

Criteria for Adverse Events(CTCAE) version 4(2009)では、

 

Grade 1  1500/mm3 ≦、<正常下限

Grade 2   1000/mm3 ≦、<1500/mm3

Grade 3   500/mm3≦、<1000/mm3

Grade 4   <500/mm3

 

と定められています。

前述のとおり好中球減少は感染リスクの増大を意味し、化学療法続行

の支障となりますが、好中球数>1000/mm3 (Grade2以下)かつ発熱が

ない状況であれば予定通り化学療法を実施して概ね問題ありません。

 

大部分の化学療法は初日から数えて10-14日目に好中球減少のピーク

(nadir)がきます。これを超えると好中球数は回復していくのですが、好

中球数の回復に先だって単核球分画が増えてきます。単核球分画が

10%あれば造血能は回復してきていると判断できます。

好中球数が1000-2000/mm3でも単核球分画が回復してきていれば

化学療法実施可能と考えてよいでしょう。

 

【緊急事態:発熱性好中球減少とは】

 

好中球数<1000/mm3(グレード3)の状態は免疫能が下がっている状態で

感染リスクが高いとされます。好中球数<1000/mm3かつ回復傾向がない

状態で感染を起こした状態を発熱性好中球減少 Febrile neutropenia(FN)

とよび、緊急対応が必要な感染症とされます。

 

FNの定義はガイドラインによって異なるのですが、日本の治療ガイドライン

における定義を提示します。

 

①好中球数が500/mm3未満、または1000/mm3未満で48時間以内に500/mm3

未満に低下すると予測される状態

②腋窩温37.5℃以上、または口腔温38.0℃以上の発熱をきたしている

 

①②の条件がそろっている状態をFNと定義する、となっています。

 

Clin Infect Dis. 2004; 39 Suppl 1:S49-52.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15250021

 

FNを起こした場合、迅速に適切な抗菌薬投与が必要です。

治療法についてもガイドラインが出ています。

 

Clin Infect Dis. 2011; 52(4):e56-93.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21258094